主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-③ 
そこでもやはり、息吹にはなるべく詳細は話さないでおこうという話になった。

主さまはこと息吹のこととなるといつも以上に慎重になり、母をそのように大切にしている父を尊敬している兄弟が口を挟むことはない。

またそこは祖父の晴明にしても同じで、血が繋がっていないことは知っていたが、息吹の育ての父――兄妹にとっては尊敬の対象の何者でもない。


「父様、俺は明日母様に会った時なんて言えば…」


「…特にこちらから何か話す必要はない。どうせ何かしら勘付いているだろうが、お前たちから特に何か言う必要はない」


「はい、分かりました」


朔たちが一旦下がると、主さまは縁側に出てごろんと寝転がり、深すぎるため息をついた。

晴明はまた書物を読み返して精査していて、ふたりを任された雪男は茶を飲みながら今後のことを口にした


「で?輝夜と“渡り”を会わせてどうするんだよ」


「何が起きるか分からんが、恐らく何かが起きる。それを待つ」


「待ってくれ、輝夜たちを危険な目に遭わせるわけには…」


「あれは輝夜の中に下弦を見た。何故あの場に居座り続けるのか…分かるだろう」


「…息吹が許さないと思うけどな」


「だから息吹に話す必要はないと言っている。…お前まさか息吹に言うつもりじゃないだろうな」


――息吹が絡むと目の色が変わるのは雪男も同じだ。

息吹が胸を痛めるような事象からは全て遠ざける――その点においては主さまに負けずとも劣らむ自負があり、また喧嘩を売られた形の主さまもぎらりと雪男を睨みつけた。


「そんな告げ口みたいなことしねえよ。俺を甘く見んなよな」


「ふん」


「まあまあふたりとも。茶でもゆっくり飲まぬか」


ひとりのんびり口調の晴明に、ため息。
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