主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-③
暗闇の中、ひとり正座して微動だにしない人影がある。
ぴくりとも動かないその姿は小さく、目を細めて見るがその表情を窺い知ることはできない。
…もう何度もこの夢を見た。
恐らく女であるその者は、本当に人形のようにじっとしていて動かないのだ。
話しかけようとするが声が出ず、ただただその姿を見守ることしかできないこの夢はきっと何かの予兆――
「母様?どうしたんですか?」
「…えっ?あ、ごめんね、なんかぼーっとしちゃった」
――晴明の屋敷に移って以来寝ている時も、そして起きている時も白昼夢を見るようになった。
遊びに来ていた朔から小さく身体を揺すられてはっとした息吹は、ものすごく心配そうな顔で手を握ってくる朔に笑いかけた。
「母様…疲れてるんじゃないですか?」
「そんなことないよ?朔ちゃんこそちゃんと眠れてる?」
「俺は大丈夫ですけど…父様は落ち着かないみたいです。よく縁側で寝てます」
「ふふ、さすがに寂しいって思ってくれてるのかな」
主さまはなかなか会いに来てくれなかった。
我が儘を言って幽玄町を出てきたにも関わらず、少し見放されたような気分になっていた息吹が寂しげに笑うと、朔はきゅっと唇を引き結んで力強く頷いた。
「妹や弟たちのことは俺に任せて下さい。でも父様だけはどうにもできません。母様、文を書いてはどうでしょうか」
「文?うーん、書いても読んでくれるかなあ。主さま本とか嫌いだから」
「母様の文なら絶対読みます。俺、お祖父様に硯とかお借りしてきます」
こちらの返事を待たずさっと居なくなった朔にまた苦笑した息吹は、先ほどの夢を思い返す。
「…一度家に帰らなきゃね」
それも、こっそり。
ぴくりとも動かないその姿は小さく、目を細めて見るがその表情を窺い知ることはできない。
…もう何度もこの夢を見た。
恐らく女であるその者は、本当に人形のようにじっとしていて動かないのだ。
話しかけようとするが声が出ず、ただただその姿を見守ることしかできないこの夢はきっと何かの予兆――
「母様?どうしたんですか?」
「…えっ?あ、ごめんね、なんかぼーっとしちゃった」
――晴明の屋敷に移って以来寝ている時も、そして起きている時も白昼夢を見るようになった。
遊びに来ていた朔から小さく身体を揺すられてはっとした息吹は、ものすごく心配そうな顔で手を握ってくる朔に笑いかけた。
「母様…疲れてるんじゃないですか?」
「そんなことないよ?朔ちゃんこそちゃんと眠れてる?」
「俺は大丈夫ですけど…父様は落ち着かないみたいです。よく縁側で寝てます」
「ふふ、さすがに寂しいって思ってくれてるのかな」
主さまはなかなか会いに来てくれなかった。
我が儘を言って幽玄町を出てきたにも関わらず、少し見放されたような気分になっていた息吹が寂しげに笑うと、朔はきゅっと唇を引き結んで力強く頷いた。
「妹や弟たちのことは俺に任せて下さい。でも父様だけはどうにもできません。母様、文を書いてはどうでしょうか」
「文?うーん、書いても読んでくれるかなあ。主さま本とか嫌いだから」
「母様の文なら絶対読みます。俺、お祖父様に硯とかお借りしてきます」
こちらの返事を待たずさっと居なくなった朔にまた苦笑した息吹は、先ほどの夢を思い返す。
「…一度家に帰らなきゃね」
それも、こっそり。