主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-③ 
「主さま、いいか?」


「…入れ」


すらりと障子を開けた雪男は、時折身体を痙攣させている息吹を見てため息をついた。

過去何度かこういった経験をしていて、その度に気を揉んで…

だが本人はけろりとしていてどれほどこちらが心配したか――


「またか…。地下のあいつが関係してるんだろ?」


「…そうらしい。息吹がここに隠してあった書物を持っていた。お前は一体何をしていたんだ?息吹が戻って来ていたんだぞ」


「いやそれについては申し訳ないけどさ…息吹の気配を違えることなんて絶対ないぜ。なんで分からなかったんだろ」


晴明邸で眠っていた息吹の傍には姿を隠すことのできる羽衣が落ちていた。

あれを使えば全てを遮断でき、息吹はそれを使ってここに戻って来たのだろう。


「こうなったらもう俺たちにはどうしようもない。後で地下のあれに会いに行く」


「いや待ってくれ。坊ちゃんや輝夜たちを気にかけてやってくれ。それにきっと天満も勘付いてる。主さまが傍に居るのが一番いい」


――朔たちをとても愛しんで気にはかけているが、いかんせんそれが態度や表情になかなか出すことができない主さまは、小さく息をついて息吹のさらさらの髪を撫でた。


「後で会いに行く。今夜は地下のあれはいい。…氷雨、お前にも迷惑をかけるが子たちを気にかけてやってくれ」


「きゅ…急に真名を呼ぶなよな…」


照れて髪をがりがりかいた雪男は、膝をついたまま息吹ににじり寄って触ろうとして、主さまの純粋な殺気を浴びて手を引っ込めた。


「全く…ほんっとじゃじゃ馬なのは変わんねえな」


「…」


いつまでも変わらないのが息吹の長所であり、短所でもある。

主さまと雪男はそろって深いため息をついて、同じ悩みを共有し合った。
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