主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-③ 
常に追われる人生――

そう口にした花にどれだけ同情したことか。

だが――同情だけだろうか?

あの見たこともない金の髪に、海よりも真っ青な青い目に…吸い込まれたのはどこの誰だろうか?


「主さま…百鬼たちが主さまが女を囲っているのではと噂をし始めています」


「勝手にさせておくといい。遠野、僕は花をここから出すつもりはない」


「ですが奥方たちも良くは思っておりません」


「僕と彼女たちの夫婦関係は最初から破綻していた。…お前は何が言いたい?」


――普段温厚で物事をはっきり口にしない下弦がぎろりと遠野を睨むと、下弦の本来の本質を見た遠野は深く頭を下げてその場から立ち去った。


「僕が…花に懸想していると言いたいのか」


否定はしない。

むしろその感情に気付き始めていたから好都合だとも言えた。


だが花は自分の好意を良くは思っていないらしく、最近しきりにこの屋敷から出ようとしてる節があり、より強い結界を張って外に出ないようにしていた。


「己の願望を叶えるために花を利用しようというのか。なんて愚かな…」


大して大きな望みなどない下弦からすれば、理解できないことだった。

口にするだけでその願いを叶えるという花の特性――悪用しようと思えばどこまでもできる能力。

だが望んでもいないその能力に花がどれだけ苦しんで、自らの声を封印しなければならなかったのか…考えるだけで胸が痛む。


「僕は…花を大事にしたいんだ」


可愛らしくて、深海のような目をした花。


花を奪おうとやって来る者は必ず返り討ちにする――

普段覇気のない下弦が静かに燃え始めた。

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