主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-③ 
輝夜はその日昏々と眠り続けた。

こちらの呼びかけに全く反応せず、高熱を出して熱に浮かされながら何かしらの言葉をぽつぽつと口にしていた。


「すぐ…会える…」


傍から片時も離れなかった主さまと朔と雪男は、輝夜が時々発する言葉に耳を傾けたが…意味が分からずどうすることもできずにいた。

だが、間違いなく何かに感化されている。

いやむしろ乗り移られたといっても過言ではない。

まだ幼い輝夜の声は変声期を前にまだ高く、だが今そうして熱に浮かされながら発しているその声は少し低くやわらかく、とても輝夜の声とは思えないのだ。


「父様…輝夜は大丈夫なんでしょうか」


「…様子を見るしかない。朔、お前は地下のあれの話を輝夜にしたか」


「していません。俺は俺で自分なりに色々調べようとしていた矢先でした」


「…そうか。それについてはお前も悪い。勝手なことをするなと言ったはずだぞ」


あまり子供たちを叱らない主さまに怒られた朔はしゅんとしょげながらも輝夜の手を握って少し歪んでいる苦しそうな表情を見て胸を痛める。


「父様…あれを追い出すことはできないんですか?」


「…少なくとも今まではやったことがない。あれに関連する書物を見つけたが、術がかかっていて開かない。あれさえ開けば…」


「主さま」


雪男に窘められてはっとしたが、朔はしっかりそれを聞いていて主さまを見上げて問うた。


「俺にも見せてもらえますか?」


「いいや、安全と分かるまでは見せられん。いいか朔、このことは絶対に息吹には言うな。分かったな?」


「はい、それだけは必ず」


息吹だけは絶対に関わらせない。

とにかく今は輝夜にこれ以上異変が起きないよう見守るしかない。


その日はとても長く長く、主さまは百鬼夜行をかなり早い時間に切り上げて輝夜の元に戻った。
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