主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-③ 
疲れた顔をして朔がやって来た時、息吹は異変を確信した。

この長男は誰よりも聡く、全てを守ろうとする一面があり、特に輝夜が関わればそれは遺憾なく発揮されてひとり疲弊してしまう時がある。


「朔ちゃん…母様ね、ちょっと夜眠れなかったから一緒に寝ない?」


「!いいんですか…?」


「うんいいよ、一緒に寝よ」


容態が安定している百合の傍には晴明がついてくれたので、息吹は朔を抱き寄せて横になると、少し嬉しそうにしている朔の頬をちょんと突いた。


「何か隠してることがあるでしょ」


「いえ、そんなことは…」


「もう…そういうところは父様に似ちゃったんだね。私に何か悪いことが起きないようにって思ってるんでしょ?朔ちゃんったら…女たらしなとこは父様に似ちゃだめだよ?」


「ふふ、はい」


歳の割にはやはり成長が速く、成長期を迎えるとさらにすぐ大きくなってしまうと言われる鬼族の血を引いている朔がこの腕にすっぽり収まる間は存分に甘やかしてやろうと思っていた。


恐ろしく顔立ちが綺麗でこの先間違いなく女に言い寄られるであろう朔の情操教育は全て息吹が行ってきたため、朔は人寄りの考えも否定せず受け入れている。


「当主はお嫁さんを何人も作っていいって聞きました」


「そうだけど…朔ちゃんは何人も好きな人が欲しいの?」


「ひとりでいいです。父様と母様は俺の憧れですから」


大人びてはいるが、すり寄ってきて甘える朔にきゅんとした息吹はさらさらの黒髪を撫でてやりながら掛布団を肩までかけてやった。


「絆を作ることが大切なんだよ。朔ちゃんにもきっと素敵な人が見つかるからね」


「はい」


昨晩は輝夜が寝込んだためよく眠れなかった朔は、息吹のいい匂いと優しさに包まれてすぐ寝息を立てた。


息吹はただただ願っていた。


何も起きませんようにと――
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