主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-③ 
異変を感じていた。

何故かは分からないが、何かが起きたと感じた。

息吹と共に眠っていた朔は飛び起きると辺りを見回して目を擦った。


「輝夜…」


「朔ちゃん?どうしたの?」


「輝夜が……帰らなきゃ」


「輝ちゃんに何かあったの?!」


「…分かりません。母様、もう帰ります。行かなきゃ」


妙な使命感を胸に立ち上がって行こうとする朔をどう呼び止めようかと息吹が考えている間に、別の部屋に居た晴明が現れて朔に声をかけた。


「何か起きたようだねえ。…行くのかな?」


「はい。でも…きっと何もできない」


「そうでもないよ。輝夜はそなたが居るとより自我を保てる。あの子は敏感だから何をも受け入れてしまうが、そなたがそんな輝夜に声をかけ、気にかけていることが大事なのだよ。私も共に行こう」


「父様、私も…」


「そなたは駄目だ。息吹、これはね、十六夜の家系の問題なのだと思う。そなたもその一員ではあるが、十六夜はまだそなたにそれを打ち明けていないのだ。何故だか分かるね?」


息吹は唇を噛み締めて膝の上で拳を握った。

…皆は信じないが――主さまは優しすぎるのだ。

危険なものかもしれないものをすべて遮断して取り払って、平穏な暮らしを自分が送ることを強く望んでいる。

だからこそ、何も教えてくれない。


「守ってくれてる…」


「そうだよ。あれはそなたに打ち明けて、そなたが関わって自ら危険なことに足を突っ込もうとするかもしれないことが気がかりで許せないのだ。だからここに居てほしい。私からも重ねて頼むよ」


晴明の切れ長の目がふっと和らぐ。

またこの義父もとても大切にしてくれているのはよく分かっている。


「…はい…」


「よし。じゃあ朔、行こうか」


「はい」


空を雲が逆巻く。

いやな風が吹いていた。
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