主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-③ 
朔たちは主さまが決断したことを信じている。

それは側近の雪男たちも同じで、部屋から出て来た主さまの手に書物がないことを目ざとく見つけた雪男は、ふたり一緒になって縁側で饅頭を食べていた朔と輝夜の頭をぽんぽん叩きながら首を傾けた。


「なんか分かったか?」


「…大体は」


「大体って。なんだよ、教えてくんねえのかよ」


「もう少し精査したい。ちゃんと話すからそれまで聞いて来るな」


今回の案件は輝夜が深く関わっている。

元々いつもふんわりしている性質なため、今緊張感に包まれてぴりぴりしているのがよく分かった主さまは、それを誰よりも身近に感じている朔もまた同じ顔をしていてふっと笑った。


「父様?」


「お前たちはまるで双子のようだな」


「俺はこんなにふわふわしてません」


「兄さん…私はふわふわなんかしてません。毅然としていて泰然としていて…」


「どの口がそれを言うんだ」


輝夜の口の両端をむにっと引っ張ってそれを否定する朔たちの近くに座った主さまは、いずれ家業を継いで朔の支援をするであろう輝夜と後を継ぐ朔に言い聞かせた。


「地下のあれだが、輝夜…お前に干渉してくることを俺は許せない」


「…でも私はなんとかしてあげたいんです」


「そうだろうが、どうにもできないこともあると知っておくんだ。今回の件は…おおよそ大体は見えてきたが、俺にもどうすることもできないかもしれない」


「父様にもできないことがあるんですか?」


「あのさ、坊たちは知らないかもしんないけど主さま意外と不器用なんだぜ」


「…お前ほど器用じゃないという話だ」


茶々を入れてきた雪男にむっとしながら答えた主さまは、皿から饅頭をひとつさらって口に放り込んでごろんと横になった。


「ま、不器用な主さまを俺が支えてるってわけ。だからお前たちは俺を尊敬…おい、寝んな!」


主さまの懐に潜り込んだふたりが安心しきった顔で同じように目を閉じる。

肩を竦めた雪男は三人に掛布団をかけてやり、笑みながら文に目を落とした。
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