主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-③ 
「話せないというわけではないんだな?」


「そうだねえ、話せるが、事情があって話せぬというところか。花殿が何かを口にすれば災いが起こるとか、そういう類のものであることは間違いないだろう」


主さまが小さく舌打ちをすると、晴明は茶を口に運びながら眉を上げた。


「良いではないか、花殿はそれを承知で話さぬのだ。そしてそれを当時の当主も知っていたのではないか?」


――それは書物にも書かれてある。

ただ花が話さない理由は…書いてあるかもしれないが半ばをすっ飛ばして読んでいたため、主さまは深い息をついて部屋の隅の書物に目をやった。


「あれをまた読めというのか。虫唾が走るぞ」


「私は恋物語であっても大歓迎だよ、よこしてみなさい」


「駄目だ、これは我が一族の者しか読んではいけない秘蔵のものだからな」


「ふむ、私は身内ではないと?」


晴明の目が光る。

こういう時晴明はてこでも動かず、理詰めで攻めてくることが多く、そうなると主さまはいつもやり込められてしまって言うことを聞かざるを得なくなるのだ。


「…待て。やっぱり俺が先に読む。お前には後で見せてやる」


「いいとも。輝夜がまたおかしなことにならぬよう注意するのだよ」


「…分かっている」


主さまと晴明が揃って部屋を出ると、朔と輝夜は庭の鯉に餌をやりながら雪男と何やら笑い合って話をしていた。

あれから輝夜にはいつも目を配り、ひとりにさせないようにしていた。

そうしなければ本当にあの子は消えてしまうかもしれない――

妙な不安がいつも拭えなかった。
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