主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-③ 
あの書物に触れてからというもの、輝夜はいつにも増して気もそぞろになった。

加えて主さまが部屋に引きこもって書物を晴明と共に解読した後とても不機嫌な顔で夕暮れ時にやっと出てきたかと思えば、何も話さず百鬼夜行に出て行こうとする。


「父様。書物はどうなりましたか?」


「…お前は気にするな。俺が解決する」


「でも…私は関係あるんです。下弦さんが私に呼びかけてきた時から私には関わりがあると思っています」


「……下弦がお前に話しかけただと?」


――何か言ってはならないことを口走った気がする。

輝夜がそれを察して黙り込むと主さまが詰め寄りそうになり、そこに朔が身体を使って割り込んで立ち塞がった。


「父様、落ち着いて下さい」


「俺は落ち着いている。聞き捨てならんことを聞いたから輝夜に聞こうとしただけだろうが」


「輝夜に何もしないで下さい。輝夜は…救ってやろうとしているだけなんです。きっと」


誰よりも輝夜の心情を理解している朔のその時の目は決して童のものではなく、ひとりの男として、兄として…主さまの前に立っていた。


…すでに上に立つ者の風格がある。

この先数年後にはもうこの小さな姿ではなくなってしまう朔の前で膝を折った主さまは、唇を噛み締めている朔の頭を撫でて安心させるように微笑んだ。


「分かっている。俺とて輝夜の父なんだぞ、悪いようには決してしない」


「…はい。出過ぎたことを言いました。ごめんなさい」


それを見ていた輝夜は、主さまの袖をぎゅっと握って潤んだ目で訴えかけた。


「私の生涯に関わる気がします。どうか何も隠さず話して下さい」


…あの甘々な恋物語を話さなければならないのか?


主さまの口がへの字に曲がった。
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