主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-③
「つまり…妻を持ちながら“渡り”と恋仲に落ちた…と?」
「うむ、にわかには信じることができぬのだが…。下弦は花殿を匿ったことで不運に見舞われて死んだのだろう。子を残していたのが幸いだったねえ」
もしかしたら自分たちは“渡り”の女との間に生まれた子の子孫なのでは――
その不安を消し去ってくれた晴明を見つめてほっとした朔は、隣にすわる輝夜の手を握って離さないまま身を乗り出した。
「最期には…なんと書かれてあるのですか?」
「…十六夜」
「…いい。話してやれ」
何故か主さまに確認をとった晴明にふたりが顔を見合わせる。
主さまは相変わらず鼻面に皺を寄せていたが、もうふたりに包み隠さず話さなければ収まらないと思っていたので先を促した。
「“渡り”の他の男が花殿を迎えに現れて、下弦はその男を倒す際、ほぼ相打ちと言う形で命を落としたらしいのだ。最期だけは筆跡が違う故、下弦が書いたのではないようだが」
「相打ち…他の“渡り”…」
「本来この国は大陸より飛来する“渡り”を拒絶してはおらぬ故こういった事象はいつでも起こり得た。下弦を失った後花殿はああしてずっと地下で何かを待っているのだ」
「私は…下弦さんに身体を譲りました」
輝夜の突然の告白に朔が目を見張り、主さまは黙ってその告白を聞き、晴明は優しく肩を抱いてやって微笑みかけた。
「ふむ、それでどうなったのかな?」
「とても…とても嬉しそうで…でも下弦さんは死んでいるはずなのにどうして…」
「…近いのかもしれないね」
「何が…ですか?」
晴明は深く息を吐いて心を落ち着かせると、両の掌を見つめて静かに問うた。
「そなたたちは輪廻転生を知っているかい?」
――輪廻転生。
その難しい言葉の響きにふたりが首を傾げた。
ただ――その言葉の響きに輝夜はぞくっと背筋を震わせていた。
「うむ、にわかには信じることができぬのだが…。下弦は花殿を匿ったことで不運に見舞われて死んだのだろう。子を残していたのが幸いだったねえ」
もしかしたら自分たちは“渡り”の女との間に生まれた子の子孫なのでは――
その不安を消し去ってくれた晴明を見つめてほっとした朔は、隣にすわる輝夜の手を握って離さないまま身を乗り出した。
「最期には…なんと書かれてあるのですか?」
「…十六夜」
「…いい。話してやれ」
何故か主さまに確認をとった晴明にふたりが顔を見合わせる。
主さまは相変わらず鼻面に皺を寄せていたが、もうふたりに包み隠さず話さなければ収まらないと思っていたので先を促した。
「“渡り”の他の男が花殿を迎えに現れて、下弦はその男を倒す際、ほぼ相打ちと言う形で命を落としたらしいのだ。最期だけは筆跡が違う故、下弦が書いたのではないようだが」
「相打ち…他の“渡り”…」
「本来この国は大陸より飛来する“渡り”を拒絶してはおらぬ故こういった事象はいつでも起こり得た。下弦を失った後花殿はああしてずっと地下で何かを待っているのだ」
「私は…下弦さんに身体を譲りました」
輝夜の突然の告白に朔が目を見張り、主さまは黙ってその告白を聞き、晴明は優しく肩を抱いてやって微笑みかけた。
「ふむ、それでどうなったのかな?」
「とても…とても嬉しそうで…でも下弦さんは死んでいるはずなのにどうして…」
「…近いのかもしれないね」
「何が…ですか?」
晴明は深く息を吐いて心を落ち着かせると、両の掌を見つめて静かに問うた。
「そなたたちは輪廻転生を知っているかい?」
――輪廻転生。
その難しい言葉の響きにふたりが首を傾げた。
ただ――その言葉の響きに輝夜はぞくっと背筋を震わせていた。