甘いチョコとビターな彼


「お前、どこ行ってたんだよ。教室にもいなかったし」


「ごめんね、チョコくん」


「は?」


「約束、破っちゃったんだ」


「え……」


「ナルちゃんに、話しちゃったの。だから、あの約束はなかったことにしていいから。チョコもいらないからっ」


「お前……」


私に近づいてきていた足音が、ピタリとやんだ。


これでもう、チョコくんが私と一緒にいる意味はなくなった。でも……


「っ、でも私は!チョコくんのことが好きだから!」


「っ!?」


俯いていた顔を勢いよく上げて、私は目の前の彼をしっかりと見つめる。


「私がもうチョコくんをあの約束で縛ることはなくなったから、チョコくんが私と一緒にいる意味はもうないのはわかってる……」


「は……?」


「でもっ、それでも私は、チョコくんと一緒にいたい!チョコくんの笑顔を、私に向けて欲しい!」


「…………」


「っ、チョコくんのことが好きです!チョコくん、私を好きになってください……っ!」


ポケットに閉まっていた、小さな包みを前に出して目を閉じた。


昨日、お姉ちゃんに教えてもらいながら頑張って作った、チョコチップクッキー。


チョコレートはチョコくんに叶うはずがないから、クッキーにして渡そうと決めていた。


初めてのお菓子作りで、感動する美味しさにはなってないと思う。
でも、私の精一杯の気持ちを込めて作ったから……


「────梓」

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