政略結婚はせつない恋の予感⁉︎
しばらくして、誓子さんが戻ってきた。
テンションが低いので、どうやらケンちゃんではなかったらしい。
「彩乃……お迎えよ」
……お迎え?
まさか……昨夜、わたしに「敵前逃亡」をされてしまった海洋?
「副社長よ……『将吾さん』よ」
……へっ!?
な、なんで、将吾さんがここにっ!?
「わたし、チクッてないわよっ!」
誓子さんが目の前で手を振りながら、あわてて言う。
……それは、わかっている。
だって、明け方まで一緒にオーパス・ワンを呑んで「ビバ」ってたんですもの。
「早く、行きなさいよっ」
誓子さんが急かす。
「だ…だってぇ……」
わたしはじりじりと後ずさる。
「あなたエラそうに、会社で謙二さんに会いに行くのを渋るわたしを羽交い締めにして、引きずるように連れて行ったじゃないっ。
『だったら、直接本人に聞きましょうっ!……さあっ!!』って」
……うっ、復讐、ですか?
わたしはあなたにとって、ものすごーくいいことをしたと思うんですけれども。
「彩乃だって、副社長とは一度きちんと話さないと、って思ってるんでしょ?」
……そりゃ、そうだけども。
「副社長にさ、彩乃の『本心』を洗いざらい話してみなよ?」
……いつまでも、逃げられはしないのはわかっている。
「それで玉砕したら、骨は拾ってあげるから。
いつでもここに来なさいよ。ここじゃなくても、うちは売るほど家も部屋もあるしさ」
彼女の家業である大橋コーポレーションの原点は不動産業だった。
……ここが、潮時か。
わたしは部屋を出て、玄関へ向かった。