政略結婚はせつない恋の予感⁉︎
将吾は神田のコインパーキングにワンボックスカーを駐車した。そして、神保町の古書街を一本入った路地にある、カウンターだけの割烹料理屋に向かう。
以前、将吾がWeb会議で行けなくて島村さんと二人で行った、ミシュランで星をもらったお店で修行した人が独立して開いたお店だ。
「……リベンジだ」
将吾がつぶやいた。
もちろん、わたしの手とは恋人つなぎだ。
……やっぱり、相当、めんどくさい人だ。
暖簾の中に二人で入ると、三十代半ばくらいの店主から声がかかった。
「富多さん、いらっしゃい!
やっと、彼女さんと……もう、奥さんかな?
来てくれましたね」
カウンターの奥にぴったり並んで座る。
恋人つなぎは解かれた代わりに、将吾の左手は椅子に座ったわたしの腰に回る。
「とりあえず、生中二つ」
将吾が勝手に頼む。
……ま、最初はいつもビールだけど?
「はーい、生中二つ!」
お店の若衆の威勢の良い返事が返ってくる。