『ツインクロス』番外編
「これ…。こんなの、何でお前が持ってるんだ?」


冬樹が無表情で力に質問をした。

手には、その写真を持って。

それは冬樹が保健室で清香と話をしている中で見せた笑顔を撮られた写真で、以前長瀬が雅耶に売り付けた中の一枚と同じものだった。

「こんなの」と言って差し出したその写真に、力が何気なく手を伸ばそうとすると、冬樹がサッとそれを引っ込める。


「…答えろ」


冬樹は大層ご立腹のようである。

面と向かって睨まれている力は勿論だが、その写真の存在を知っている雅耶や長瀬も自然と背筋が伸びた。


そんな中、雅耶は長瀬にこっそりと耳打ちした。

「なぁ、お前もしかして力にまであの写真売ったのかっ?」

信じられないという表情で見てくる親友に。

「まさか。断じて俺は雅耶にしか流してないぞ。写真部と繋がりあるって言ったって、俺は売り子でも何でもないし。でも、神岡の奴はどこで手に入れたんだろ?そもそも、この学校のブロマイドの存在を知ってるなんて侮れん奴だ」

長瀬が変に感心しながら言った。


その時、冬樹の追求に白旗をあげた力が、ぽつぽつと話し出した。

「これは、その…写真部の二年生に貰ったんだ。こないだ、ちょっとした縁で知り合ってさ。どうしてもくれるって言うから…その…な?」

いまいちハッキリしない力の言い分に。

不快感をそのままに、次に冬樹は長瀬に話を振ってきた。

「写真部って…。こんなの撮ったりするものなのか?これって隠し撮りだろ?」

「えっ?あー…まあ。この学校のある意味伝統になってるらしいんだけど…。人気のある生徒のブロマイドを写真部が売ってるんだよね」

長瀬が思いのほか嬉しそうに説明をする。
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