御曹司と婚前同居、はじめます
「あいつには気をつけろと言ったはずだ」

「ごめんなさい。食事くらいならいいかと思って……」

「いいわけないだろう。こんな目に遭ったのに」

「こんなめって」


続く言葉は、強引なキスによって塞がれた。

冷たい唇の感触が胸の奥を強く締め付ける。

いきなりどうして――。

名残惜し気に離れた唇が、「俺より先にするなんて」とこぼした。

俺より先に?


「え? どういうこと?」


余韻に浸る暇もなく尋ねる。


「キスをしていただろう?」

「は?」

「……ん?」


変な間が生まれた。

お互いに目を見開き合ったまま時間だけが過ぎていく。

もしかしてだけど、さっき創一郎さんとキスしたって思い込んでる?


「……してないよ? されそうにはなったけど」


言葉を付け足すと、私を真っ直ぐに見つめていた目が落ち着きなく泳ぎだした。


「そう、か」


これって、自分の過ちに気づいて相当焦っている感じ?

同意なしにキスをされて文句の一つ言いたいところなのに、瑛真のらしくない態度に調子を狂わされてしまう。
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