御曹司と婚前同居、はじめます
「悪かった」

「うん、まあ……」


謝られるのも複雑な心境だ。いつもの俺様な態度でいてくれた方が恨みつらみを並べ立てやすいのに。

瑛真はまた黙り込んでしまう。

一応反省はしているみたいだし、これ以上事を荒立てて騒がないほうがいいよね。

痴話喧嘩なんて白昼堂々道端ですることではない。

ぽつぽつと空から雫が降ってきた。雨だ。

傘を差そうと思ったところで、そういえば瑛真はどこから湧いて出てきたのかと首を傾げる。

普段から車移動しかしないのだから、彼が傘を持っていないのは当たり前だ。


「柏原さんは?」

「車で待たせてある」


言いながら顔を向けた先に、いつもの黒塗りの車がハザードランプを点灯して停車しているのが見えた。

ちょっと待ってよ。この距離なら今までのやり取りが丸見えなんじゃないの?

というか、柏原さんだけではなく通行人にもキスシーンを見られていた可能性の方が高い。
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