御曹司と婚前同居、はじめます
「何をしている」


地を這うような低い声。


「昼食を一緒にとっていただけだよ。そんなに怒ることじゃないだろう」


反対に、戸惑いながらも陽気に返す創一郎さんの声。

表情が見えない分、余計にはらはらする。


「俺の許可なく勝手なことはするな」

「それは美和さんの自由だろ」

「美和は俺の婚約者だ」

「だから? 婚約者だから、俺と食事をするのはまずいって?」

「そうだ」


はあ、と大きな溜め息が聞こえた。


「悪かったよ。ひとまずここはこれで終わりにしないか? 周りの視線が痛い」

「……先に戻れ」

「はいはい、戻りますよ」


それきり会話が止んだ。

創一郎さん、いなくなったのかな……。


「瑛真、そろそろ離して欲しいんだけど」


腕の力が弱まったので手のひらで押し退けた。さぞ怒りに満ちているだろうと踏んでいた表情は、意外にも苦々しい顔つきだった。

どうしてそんな顔をするの?

瑛真の気持ちが見えなくて困惑してしまう。
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