御曹司と婚前同居、はじめます
 ◇



『あいつとは絶対に二人きりになるな』と言われてから身構えていたけれど、創一郎さんはこの前のように一人きりでいる私に近寄ってくることはなかった。

瑛真が極力私を一人にしないようにしていたせいもあるけれど。

彼に連れて行ってもらったイタリアンのお店の話をすると、対抗心に火がついたのか、俺も美和をレストランに連れて行くと言ってきかない。

イタリアンばかりではさすがに飽きてしまうので、百歩譲ってフレンチにしてもらった。

ありがたいけど、普通のお店でいいのに。そうすれば左手が不自由な瑛真が片手で無作法に食事をしても問題はないのに。

ナイフとフォークを使わなければいけないし、左肩に負担がかかるからやめた方がいいと言っても瑛真は『問題ない』の一点張りだった。

強がりなのも限度を超えると心配で仕方ないという、こっちの気持ちも分かって欲しい。

土曜日の今日、長く居座った雨雲がようやく去ってくれた。

久し振りの陽射しが心も体もぽかぽかと温めてくれる。


「出掛けよう」


もうすぐ正午になろうとする時、ストライプ柄のシャツを持って出てきた瑛真が窓外を見て眩しそうに目を細めた。
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