御曹司と婚前同居、はじめます
私が九歳の頃から、その生涯を終えるまで父親代わりとして育ててくれたおじいちゃんの顔が瞼に浮かぶ。

仕事をしていた時の姿は知らない。私が知っているおじいちゃんは、よく食べよく笑い、よく冗談を言う陽気で明るい人だった。

おばあちゃんのことも私のこともとても大切にしてくれて、親元を離れて寂しい思いをしていた私に沢山の愛情を注いでくれた。


「じいさんと、瀬織の会長が親しい仲なのは知っているだろう?」


懐かしい姿を思い出して心が幾分落ち着いた。お父さんに頷き返す。


「彼等は互いの子供同士を結婚させるのが夢だったんだ。だけど瀬織家には男二人、堂園家には父さん一人の、見事に男しか生まれなかった」


私と瑛真が幼馴染であるように、お父さんと瀬織のおじさまも幼馴染でとても仲が良い。つい先日も一緒にミシュランガイドに掲載されているレストランへ食事に出掛けたと聞いている。

もしかして、そこで今回の件について話し合われたんじゃ……。


「夢は孫の代まで引き継がれ、美和と瑛真くんの結婚は、美和が生まれた時点で決められていたことなんだよ」


やっと話が繋がった。
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