御曹司と婚前同居、はじめます
「美和のご両親とはこういった場でよく会うんだ」

「え? そうなの?」

「本来なら美和も顔を出すべきだったが、おじさんが頑なに拒んでいてね」

「……どうして?」

「前にも言っただろう? 美和を会社の事情に巻き込みたくなかったんだろう」

「そんな気を遣わなくて良かったのに……」

「本当にそう思うか?」

「もちろんよ」

「それは頼もしい」


片方の口角だけを引き上げた口元を見てはっとする。

しまった! 嵌められた!


「美和に着せたいドレスが沢山あるんだ」

「……それが本当の目的とか言わないわよね?」

「さあ、どうだろうね」


妖艶な微笑を口元に浮かべる。

不意打ちで色気を出すのは勘弁して欲しい。

落ち着きをなくした私に気付いているのか、瑛真は吐息のかかる距離で「今夜のドレスは脱がせにくそうだ」と囁いた。


「――!!」


温かい息を掛けられた耳を手のひらで覆う。
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