御曹司と婚前同居、はじめます
だけど自分から誘えるほど経験豊富なわけじゃないので、疼く身体に『静まれ!』と強く言い聞かせた。


「眠れそうか?」

「たぶん、ね」


こんな状態で寝られるわけがないじゃない。


「瑛真は?」

「寝るのが勿体無いな」


甘い台詞を吐いておきながら、瑛真はすぐに寝息を立て始めた。

信じられない。本当に寝たよこの人。自分一人だけ興奮して馬鹿みたいだ。

はあーっと長い息を吐いて、無防備な寝顔を眺めた。

やっぱり瑛真は誠実な人よ。創一郎さんはああ言っていたけれど、やたらめったら女遊びをするような人じゃない。他人の言葉よりも瑛真の態度を信じるわ。

まやかさんのこと、創一郎さんのこと、まだまだ問題は山積みだ。

せっかくの幸せな余韻が消えてしまわぬよう、それ以上考えることを放棄して静かに目を閉じた。


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