御曹司と婚前同居、はじめます
「美和さんはどうして介護の仕事に?」
柏原さんが私に興味を示したのはこれが初めてだ。
「私は……祖父母の影響でしょうか」
自然と落ちた声のトーンに、柏原さんは手元の資料からふと顔を上げる。
「私の幼少期について、瑛真から聞いてはいないですか?」
柏原さんは瑛真とアイコンタクトを取ってから、こちらに顔を戻して頷いた。
「仕事の忙しい両親に代わって父方の祖父母に育てられたんです。両親と一緒に暮らしていたのは堂園化成が経営難に陥るまでだったので、私がまだ十歳に満たない頃ですね。あっ、別に重い話じゃないので気にしないでくださいね」
それでも柏原さんは真っ直ぐな視線を送ってきた。
瑛真といい、この人も妙に心配性だ。瑛真が彼を秘書にしている理由が分かる気がする。
「だんだんと年老いていく祖父母と一緒に暮らしていて、自然と彼等のようなお年寄りの手助けがしたいと思うようになったんです。特に祖父は病気になってから日に日に弱っていきましたから。知識がない自分が出来ることは限られていましたし、家に来てくれるヘルパーさんのことをとても尊敬していました」
例えば一級建築士のような高度な知識を必要とするわけではない介護職は、一見して誰にでもできそうだ。けれど、当たり前だけど誰にでもできる仕事ではない。
だから、介護の仕事に携わる自分を誇りに思っている。
柏原さんが私に興味を示したのはこれが初めてだ。
「私は……祖父母の影響でしょうか」
自然と落ちた声のトーンに、柏原さんは手元の資料からふと顔を上げる。
「私の幼少期について、瑛真から聞いてはいないですか?」
柏原さんは瑛真とアイコンタクトを取ってから、こちらに顔を戻して頷いた。
「仕事の忙しい両親に代わって父方の祖父母に育てられたんです。両親と一緒に暮らしていたのは堂園化成が経営難に陥るまでだったので、私がまだ十歳に満たない頃ですね。あっ、別に重い話じゃないので気にしないでくださいね」
それでも柏原さんは真っ直ぐな視線を送ってきた。
瑛真といい、この人も妙に心配性だ。瑛真が彼を秘書にしている理由が分かる気がする。
「だんだんと年老いていく祖父母と一緒に暮らしていて、自然と彼等のようなお年寄りの手助けがしたいと思うようになったんです。特に祖父は病気になってから日に日に弱っていきましたから。知識がない自分が出来ることは限られていましたし、家に来てくれるヘルパーさんのことをとても尊敬していました」
例えば一級建築士のような高度な知識を必要とするわけではない介護職は、一見して誰にでもできそうだ。けれど、当たり前だけど誰にでもできる仕事ではない。
だから、介護の仕事に携わる自分を誇りに思っている。