御曹司と婚前同居、はじめます
「はい」

『あ、美和さん?』


この声は……。


『創一郎です。いきなりごめんね。ちょっといいかな?』

「どうして番号を知っているんですか?」

『契約書を見させてもらった』

「職権濫用はよくないですよ」

『あはは。そうだね』


少しも悪びれていない態度に溜め息しか出てこなかった。


「どういったご用件でしょうか」

『冷たいなぁ。美和さんのことが心配で電話したのに』

「心配?」

『そう。会社でまやかさんに会ったそうだね』

「どうしてそれを?」

『さっき二人から聞いたんだ。あまりよろしくない場面を見られてしまったってね』


二人の言葉? 瑛真までもがそう言ったの?

創一郎さんの言葉に耳を傾けてはいけないと頭では分かっているのに、心がそうはさせてくれない。

だって、瑛真が語ってくれない事情を、この人は知っているかもしれないから。


「どうして二人はその話を創一郎さんにしたのでしょうか?」

『俺がキミのことを好きだと知っているからじゃないかな』


いつもと変わりない口調で言う。

そこには少しも愛情なんて感じられなかった。
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