御曹司と婚前同居、はじめます
「創一郎さんが私を好きだというのは嘘ですよね。そんな言葉を鵜呑みにするほど純情ではありません」

『ひどいなあ』

「どうして私に突っかかってくるのか、本当のことを教えてください」

『うーん。どうしたら信用してもらえるのかな』


彼と話しているといつもこうだ。話が堂々巡りで一向に進まない。


「聞き方を変えます。瑛真を敵対視するのはどうしてですか?」

『――そりゃあ従兄弟だし、俺の上司なわけだし、多少は意識しているよ? でも敵対視って言葉はどうかなあ』


僅かに生まれた間に確信した。彼の標的は私ではなく瑛真だ。


『この話、電話ですることじゃないよね』

「電話してきたのはそちらです」

『うん、だから、美和さんちょっと外に出ない?』

「まだやることがありますので」

『そうなの? 瑛真は今日帰れないと思うけどなあ』


何気ない言葉に息が詰まる。

遅くなるとは言われたけど、帰ってこれないの? それは仕事で? それともまやかさんとの用事があるの?


『ね? だから、俺とご飯に行こうよ』

「せっかくですがお断りします」


電話の向こう側で溜め息を吐いたのが聞こえた。

溜め息を吐きたいのはこっちよ。
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