御曹司と婚前同居、はじめます
瑛真はお酒を飲んでも顔に出ないので、彼が酔っているのかどうかは分からない。

シャワーを浴びたことで、外から持って帰ってきた匂いも全て消えてしまった。

詮索するようなことしたくないのに。どんどん自分というものを見失っていく。


「明日はお休みなの？」

「いや、明日も仕事がある」


それなのにこんなに夜更かしをして大丈夫なのかな。

話をしたかったけれど、早く寝かせてあげたい気持ちの方が勝った。


「明日も遅くなる？」

「いや……たぶん、早く帰れると思う」

「分かった。大事な話があるから聞いてもらえる？」


瞳を覗き込むと、綺麗な黒目が揺れていた。

自信に満ち溢れて、深い愛情を注いでくれた彼はここにいない。

胸がぎゅうっと圧迫されたように痛くなった。


「分かった。できる限り早く帰るようにする」

「約束ね」


短い会話を交わして、私たちは同じベッドに横になる。

今朝ここで目覚めた時は幸せだったのに……。

瑛真は一緒に寝るようになってから欠かしたことのないおやすみのキスをして、壊れものに触れる手つきで私を抱き締めた。

彼の温もりに触れてほんの少しだけほっとする。

私は流されるままに、瑛真の逞しい胸に頬を寄せて眠りについた。


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