御曹司と婚前同居、はじめます
「これまで同族経営だった堂園化成の跡取りがいないということがどれほど大変なことか……。それでもおじさんは美和を俺にくれると言ってくれた」


聞き捨てならない発言ね。人をモノ扱いしないで欲しい。

文句を言いたいけど話の腰を折るようで出来なかった。


「おじさんなりに美和にとっての幸せが何なのかを常々考えているんだよ。娘にはやりたいことをさせ、自身は亡くなられたおじいさんが築いてきた堂園化成を守ることも怠らなかった。凄いことだよ」


「良い父親を持ったな」と付け足して、瑛真は微笑んだ。

そんなこと……考えたこともなかった。

瑛真の言うように、私は物心ついた頃から堂園化成の跡は継がなくていいと言われていた。

だからこそ両親にないがしろにされているのだと思っていたのに――そうじゃなかったんだ。

お父さんもお母さんも死にもの狂いで働いていたのかもしれない。

自分だけが苦しんでいたわけじゃなかった。……ううん。むしろ、私は子供の頃から今の今まで守られていたのかもしれない。
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