御曹司と婚前同居、はじめます
「柏原、室温を上げておいてくれ」

「あ、いいよ、そんな」


私が止める暇もなく、柏原さんは機敏な動きでエアコンの温度を調整してしまった。


「美和が風邪を引いたら困るからな」


慈愛を感じさせる眼差しを受け、カフェオレが喉を伝う温かさ以上に胸が熱くなる。

ダメだ。イケメンという強者に耐性がつくどころかどんどんその魅力に落ちてしまっている。

これ以上惑わされないように、なるべく瑛真と目を合わさないようにした。


「せっかく与えられた自由なんだ。思う存分、好きなことをするべきだと俺は思う」


好きな人と添い遂げるという私の自由を奪おうとしているくせに、どの口がそんなことを言うのだろう。


「色々と気づかせてくれてありがとう。でもその話を聞いて、ますます今回の件は聞き入れられなくなったわ」

「そこまで介護の仕事が好きなら、俺のことも見捨てることなど出来ないと思ったんだけど……美和は一筋縄ではいかないな」


瑛真は溜め息を吐いた。
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