御曹司と婚前同居、はじめます
「当たり前よ。地に落ちたお嬢様がその後どんな人生を歩んできたのか、柏原さんに豆乳カフェオレを用意させる瑛真なら知っているんでしょう? 私は甘い話に乗ったりしないクソ真面目な人間なの。人生の岐路での決断というのは、そう簡単に決めていいものではないわ」


両親に守られてきた事実は認めても、私がいばらの道を歩んできたことに変わりはない。

絶対に夢なんてみない。私は常に現実を見据えて生きてきたんだから。


「その堅実主義なところ、ますます好きになりそうだ」


頭の固い女だとげんなりされると思ったのに、瑛真は何故か喜んでいる。


「昔の儚げな美和も素敵だったけど、今の美和の方がずっと良い。でも、俺の前ではそんなことは言わせないよ」


そう言って瑛真は立ち上がったかと思うと、私の横へ移動してきた。


「な、何?」


身の危険を感じて私も椅子から立ち上がろうとする。


「美和」


浮きかけたお尻は肩に置かれた右手によって押し戻され、大きな手のひらは肩からうなじへと回った。
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