御曹司と婚前同居、はじめます
「別にそんなこと思ってないよ?」


それどころか住み心地が良すぎて離れがたくなっていることに困っているくらいだ。

そんなこと、絶対に言わないけどね。

ゆるまった腕の中でくるりと身体を反転させた。

どこか寂し気な顔が私を見下ろしている。

普段は自信に満ち溢れているのに、ふとした時にこうやって子供のような顔を覗かせる。

この感情はどういう時にスイッチがオンになるのだろう?


「ご飯食べよう?」


なだめるように言うと、瑛真はいつもの笑顔で頷いた。




午前中の会議を終えてすぐ、瑛真と柏原さんは揃って打ち合わせに出てしまった。

一人社長室で頼まれた資料の整理をしていると、扉をコンコン、とノックする音に顔を上げた。

この叩き方は柏原さんじゃない。

私が対応してもいいのかな……?

どぎまぎしながら「はい?」と返事をすると、「創一郎です。入ってもよろしいですか?」と返ってきた。

専務か……。

苦手意識を持っているので反射的に身構えてしまう。

専務は人当たりの良い笑顔を振り撒きながら副社長室へ入ってきた。
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