御曹司と婚前同居、はじめます
「あの……」

「ん?」


綺麗な顔をした男性が小首を傾げる仕草をするのは卑怯だと思う。

瑛真は無自覚でこういうことをしてしまう人だけれど、この人は計算しているように感じる。

なんて小悪魔な人なの。


「自分で出来ます」

「そう? でも……」


口を噤んだ創一郎さんを見上げる。今度はこっちが首を傾げる番だ。

どこかに泳がせていた視線が戻ってくると、私の瞳を射抜くように見てきた。

何だか怖い。

急に襲いかかってきた威圧感に息ができなくなる。

ゆっくりと端正な顔が近付いてくる。距離感を失って一瞬目がくらんだ。

えっ……嘘でしょ……?

頭がまっ白になった時、「美和!」と私を呼ぶ大声が辺りに響いた。


「えっ!?」


身体ごと回転させて声の主を探す。

すると、今歩いてきた道の方から大きな足音を響かせて瑛真が走ってきた。


「どうしたの!?」


何事!?

呆気に取られている私の前にあっという間にやって来た瑛真は、恐ろしい剣幕だった。

怒ってる!? もしかして仕事を放置してきたのがバレた!?


「え、あ、あのっ」


焦った声は瑛真の胸板に吸い込まれる。

どういうわけか、かなり強い力で抱き締められてしまった。
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