さまよう爪
今までは自分の本来の好みより地味にしていたんだった。

髪のついでにメイクも変えてしまおうかな。

都合のいいことに松屋の1階は化粧品売り場になっているから。

売り場からは明るい光とパウダリーな匂い。

3機あるエレベーターを通り越して、化粧品売り場へ。

ぐるっと一周する、多くあるメーカ−の中でディオールの売り場が目に付いた。

最近、ドレッサーの中にここのコスメが増えてきていた。

ディオールのカウンターの中に居るBAさんが微笑みかけてきたので、彼女にアドバイスを求めることにする。

光沢のある品の良いブラウンの髪の毛を後ろでお団子にした彼女。

細身の身体に黒い制服が良く似合っていた。

あれ? そういえば以前はディオールのBAの制服は白いTシャツのようなものだった気がする。記憶違いか。

季節によって変わるのかもしれない。

BAさんにたった今、美容院で久しぶりに髪を短くして色を明るくしてきたことを告げる。

どうせならメイクも変えたい、特に目の印象を変えて。

今の髪色と合うものにしたい。そんな要望をBAさんに話す。

そのうちに何だか愉快な気持ちになってきた。

楽しくなり過ぎて、何らかの理由があって思い切って髪を切って情緒不安になっている女と思われない為に愉快な気持ちを自制して会話をする。

要望を聞いた彼女がタッチアップしてくれるというので頼むことにした。

椅子に座る。彼女が何点か色を選択してくれてその中から好みを聞かれる。
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