さまよう爪
道幅の広い十字路の左向かいには大きくずんぐりとして清潔な建物が見える。

松屋銀座店だ。

百貨店と呼ぶに相応しい外観をしている。

ファッションビルやスーパーではとても敵わない様な雰囲気だ。

土日となるとやはり客で溢れている。

デパートという近代になって日本に入って来た文化なのに、老舗と称される松屋は凄いと思う。

わたしが立っている左手にはアップルストアが見える。

白と灰色の建物。

開放的な店内から優しい光を中央通りの歩道へと放っている。

新しいiPhoneが出る度にニュースに出るのがここだったはず。

新製品購入の列に並び、タンクトップでモヒカンの人が取材を受けているのをテレビで観た。

これからどうしようかな? 

中央通りを人を避けながら渡る。

松屋の中に入る。

入る時にガラスに映った自分の顔を見る。

新しい髪型も中々似合っているじゃないと思った後で、化粧が今までと変らないことに気がついた。

明るくした髪と化粧のカラーが合っていない。

原因はアイメイクかな? と考える。
< 145 / 179 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop