独り占めしても、いいですか?
「あれ…?

ひよちゃん、CDの提出が無いみたいだけど…」



優ちゃんが紙をペラペラとめくりながら言った。



「あっ、えっと、私はアカペラで…」



そう言った瞬間、会場がざわついた。



それを見て私も不安になってしまう。



さっきまで笑顔で私のステージを見てくれていたみんなが、敵に変わったように感じた。



怖い。



身体が震え始めて、隣にいる透のセーターの裾をキュッと握る。



それに気づいて透がそっと手を握ってくれた。



けど、それを見た一般の人達が、追い討ちをかけるように「キャーッ」と騒いだ。



ビクッと身体が反応して、透の後ろに後ずさり。



学校の生徒からしたらいつものことだけど、一般の人からしたら初めて見るんだ。



私はひよ姫だってわかってるから、スキャンダルとかにはならないだろうけど…



観客は敵と味方が裏表。



1stステージでみんなが喜んでくれたのは嬉しかった。



けど、今はみんなが私を押し潰す重力みたいで怖い。


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