独り占めしても、いいですか?
バスの階段を登ると、先生が名簿を手に持って待ってくれていた。



「おはよう日和ちゃん!」



「おはようございます、先生」



挨拶をして、バスの奥に歩いていく。



私の家が幼稚園から少し遠いからか、バスの席はそれほど埋まっていなかった。



友達がいるわけでもないから、なんとなく2人用の席は座りづらい。



1番後ろの5人用席なんて絶対座りたくない。



悩んだ結果、後ろの方の、1人用の席に座ることにした。



座って家の方を見ると、もうママはいなくて、お家の中に入っちゃったみたいだった。



窓の外をぼーっと眺めていると…



「おい日和、なんで先に乗っちゃうんだよ!」



聞きたくない声が通路側から聞こえてきた。



いきなり名前呼び捨てだし…



「………」



私は知らないふりをして無視をする。



散々失礼なこと言ってるくせに、謝りもしない人なんてありえない。



こういう人とは友達にならないのが1番なんだから。



「凛、後ろに行こう」



凛君の後ろについてバスに乗ってきた透君が言った。



「おう!…日和も来いよ!」



そう言って私の手を無理やり引く凛君。



身長は私と同じくらいのはずなのに、意外と力が強くて、反抗しようにもできなかった。


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