独り占めしても、いいですか?
「一ノ瀬くーん、天沢くーん、次の撮影、お願いしまーす!」



遠くから監督さんの声が聞こえた。



こんな状態で、お仕事なんて…



どうしよう、私のせいだ。



「これ、次のシナリオ。

秀也からだ」



そう言って、透が丸めていた冊子を渡す。



「割り切れよ」



そう言葉を残すと、最後に私の頭をポンポンと軽く叩いて撮影の方に向かっていった。



どんな時でも仕事を投げ出さないのは透らしい。



『プロだな』と思った。



私、『ありがとう』すら言えてない…



透に続くように凛も撮影場所に歩き出す。



どうしていいかわからないで、俯いていると…



数歩進んで、私に背中を向けたところで



「悪かった。泣かせて。

こんなやつ、嫌いになっても仕方ねーよな」



そう言い残して行った。



嫌いになんて、なるわけない。



むしろ私が…



力が抜けて、ヘタッとその場に座り込む。



1週間の疲労が、ドッと押し寄せて来たみたい。



頭が真っ白になった。


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