その男、極上につき、厳重警戒せよ

「不正アタックの発信源を辿りました。いろいろ経由地を踏んでいますが、元はあなたのご自宅です。ご自宅からのアクセスに関しては社長のものと思って気にしていなかったので、発見が遅れました。……おそらく、同居されている専務の仕業でしょう。……社員からも絶大な信頼のあるあなたが失脚するには、対外的に評判を落とすしかない。そのために顧客情報の盗み出し、それが社長への恨みのせいだという騒ぎにしたかったのでしょうね」


遠田社長は眉をひそめ、桶川さんを軽くにらんだ。


「馬鹿な。私への恨みなら直接言えばいいじゃないか。自分も勤める会社の評判を落とすなど、経営者としてあり得ない」

「残念ながら、あなたの血族にはそういう方が多そうですよ」


ちらりと深山さんに視線を向けられ、私も小さくなるしかなかった。
規模の違いこそあれど、私がしていたことと専務がしていたことは同じだ。


「それに言葉が足りないところはあなた譲りともいえるんじゃないですか? ちゃんとみんなに話していれば、彼女も専務も、誤解することなどなかったと思いますけど」


深山さんにやり込められて、社長もぐっと詰まったようだ。
私をちらりと見て、大きくため息をつく。深山さんが、苦笑して遠田社長の肩を叩く。


「今回の件はあまり表沙汰にするのはお勧めできませんね。専務に顧客情報をどうこうする気はないでしょうし。対外的には、不正アクセスはあったが対処した。漏れた情報の不正利用は確認されていないとだけ発表すればいいでしょう。後は内部ですね。まずはこの証拠文書をもとに、ご家庭で話し合ってはいかがですか?」

「……気まずいな」

「それを怠ってきたから、こういうことが起こったんですよ。家族だと思うのならちゃんと話し合うべきです」


しゅん、と肩を落とす社長に、諭すように言う深山さん。
どっちが年上だから分からないくらい。

私も、直接怒られたわけではないけど、自分の情けなさに恥ずかしくなっていた。
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