イジワル男子の甘い声


「入れば」


柏場はそう言って、私を家に上げてくれた。


「忙しかったんじゃ…」


「いい。集中力切れたし」


「あ、ごめん…」


前は、柏場に何を言われようとも、別に特に何も思わなかったのに。


私のせいで不快な思いをさせてしまっているかもしれないことに、かなり凹んでる。


「洒落た飲み物とかないけどいいのかよ」


「え、あ、うん!全然!」


なんか、自然と私も一緒にクッキーを食べる流れになってるけど…いいのか?邪魔じゃないの?いや、もうとっくに邪魔しちゃってるんだけど。


「柏場くん、何してたの?勉強?」


ソファに座って、柏場くんがお茶とクッキーを入れるお皿を出すのを待つ。


「新曲の練習」


っ?!


そうだ。何を今更驚く必要があるっていうんだ。でもすっかり忘れてた。柏場はあのsakuだ。まさか、私があのsakuを一瞬でも忘れて、柏場のためにクッキーを作るなんて。


いや、目の前にいるのもsakuなんだけど。


改めて、異様な光景だ。


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