あなたと。

リンリン...


ドアを開けると綺麗な鈴の音が響いた。




目の前は大きな鏡と
勝手に入るなと言わんばかりのポールが2本。



そして心地よいアロマの匂いと薄暗い店内。




"なんか、不思議なところ。。"



そう思っていると奥から
コツコツと足音が
こちらへ向かってきた。



「いらっしゃいませ。
当店は初めてですか?」



やってきたのはスーツ姿の真面目そうな男性だった。



「あ、はい。初めてです。。」



彼は真顔のまま、



「では入会費と入店料で4000円です。
飲み放題なので追加料金はかかりません。
当店の説明をいたしますので、中へどうぞ。」




.......

待て待て待て。


"会費?!なんの会?!
なんで終始真顔?!なんの説明?!なんか怖っ!"



ぎこちなくお金を渡し、
目が点になったまま奥へと案内される。




「改めてご来店ありがとうございます。

当店はフェチの方や性的思考が強い方、男性、女性同士でしか話せない悩みや相談、そして希望があればご要望を伺い、実際にできる事は実行したりマッチング希望があればご要望が合う方と.....」


......


待て待て待て。




何をおっしゃっているのでしょうか。




"つまりなんなんだ...?フェチ?"



よく訳もわからないまま淡々と説明をする彼。
それを、ただただ口を開けて見ている私。





「お客様?」




ふと我に帰る。




「ひ?...あっすいません!
説明して頂いてなんですけどつまりここはなんのお店で?」





「つまり、ここは大人の方々が集まる、フェティッシュバーです。」





"なるほど。。。"




意外な事に、
じわじわと不安が込み上げてくる一方で
好奇心もどんどん膨れ出す自分がいた。




いや、意外ではなく元々興味がない話ではなかった。





ただ、予想外の展開でびっくりはしたが。。








「簡単に説明致しましたので、最後に店内でお呼びしていいお客様のニックネームを教えて頂けますか?」






未だに真顔の彼にニックネームを要求される。






「ゆ、、、、ゆん で、お願いします。」






自分の捻りのないネーミングセンスに
地味にガッカリしていると、






「かしこまりました。ゆんさん。
よろしくお願いしますね。」





そう言って彼はかすかに笑ったような気がした。
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