あなたと。


「お飲みものは何になさいますか?」




ほぼ棒読みで彼に尋ねられる。



「あ、じゃあビールで。。」




"接客業ならもっと笑ったりしないのかな...?"




手持ち無沙汰でメニューを読むふりをしながら
そんな事を考える。




「お待たせしました。」




手際よく瓶ビールとグラスが目の前に置かれる。





「最初は私がおつぎします。」




「どうも。。。」






さっきまで、
会話のスピードが早くてガヤガヤした会社にいたからか、


スローテンポで静かに喋る彼の一言一言に少し落ち着きを覚えた。



"でも、愛想がないし、ちょっと怖い。。"








とりあえず無理やり雰囲気に慣れようと
グラスの半分を一気に飲む。




"おいしい〜♪"




やはり仕事のあとのビールは何処で飲もうが
おいしい!!!



追加でグラスにビールを注ぎ
口をつけると、




「ゆんさん。私はレンと申します。お好きな様に呼んで下さい。」



「え?あ、じゃあレンさんで、、」




「ゆんさんは、フェチとか性癖とかあるんですか?」








初対面の人に真顔で性癖を聞かれるのは初めてだ。





"..とりあえず何か答えた方がいいよね...."



「匂いとかはフェチですかね。」



笑顔でサラリと答える。





「なるほど。でも、まだ恥ずかしさがありますよね?
無理はしなくていいですけど、せっかく来て頂いたので遠慮なく正直に言ってくださいね。」





...

なんか逆に恥ずかしいんですけど。





「もし言いにくい様でしたらこのメモに好きに書いていいですよ。」





少し顔を赤くしている私に小さな紙とペンが渡された。





"...よし!!こうなったら書きまくってやる!!"




いつの間にか水滴が浮いたビールの事を忘れて
ペンを進めていた。
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