aventure
息子の波瑠はそんな父をずっと尊敬していた。

波瑠の夢は父と同じ建築家になって
一緒に歴史に残るような建物を作ることだ。

現に波瑠は大学を卒業したら
鴻の設計事務所に入る事が決まっている。

波瑠もまた凪の事件の後、
翠とうまく行ってない。

何を相談するのも父親の鴻を頼り、
いつも凪を気遣った。

凪が出かける日は必ず波瑠か鴻が迎えに行った。

お陰で凪は兄が大好きなブラコンだ。

理想のタイプは波瑠だし、
波瑠の周りに女の子が居るとヤキモチを妬く。

波瑠はそんな凪が可愛くて
深い傷を持つ凪をずっと守ってあげたいと思った。

しかし波瑠はある日突然、父を信じられなくなる。

それはある晴れた午後、
サークルの帰りに大学から少し離れた場所で文具店を見つけて立ち寄った寄った時の事だ。

向かいのレストランで凪と大して年の変わらない、娘みたいな女の子と食事をし、
家では見たことのない優しい顔で笑う父を見たからだった。

波瑠は目を疑ったが
何度見てもそれは自分の父の鴻だった。

波瑠はそのレストランに入り、
離れた席に座ってコーヒーだけを頼んで
二人を監視することにした。

父が時々その若い女に触れ
テーブルの上で彼女の手を握ったのを見てショックを受けた。

店を出る時は彼女が父と腕を組み
寄り添って歩く。

二人の後を尾けると
父が彼女の腰に手を回してマンションに入って行くのを見た。

しばらくそこで父が出て来るのを待っていたが
父が出てきたのは3時間ほど経ってからだった。

車に乗ってネクタイを締め直す父をみて
父があんなに若い女と深い関係になっている事を知ってしまった。

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