aventure
桜智は授業中ソワソワしていた。

鴻への後ろめたさはあるものの
颯斗という男の存在を何となく嬉しく思った。

食事をするくらいなら許されるかなと甘く考えて
カッコいい先輩から誘われた事をただ喜んでいた。

「どうしたの?なんか楽しそう。

おじさんとデートがそんなに楽しい?」

桜智が浮かれてるのは
友達の真緒に簡単にバレるほどわかりやすかった。

「そうじゃないの。

今日ね、4年の建築学科の先輩に食事に誘われたの。」

「え?何、それ?

良いなぁー。で、浮かれてるってことは…
その先輩はカッコいいの?」

「うん。

なんかね、鴻さんを若くした感じ。」

「は?

何でもあのおじさんに見えちゃうんだね。

そんなに好きなら浮気しない方がいいと思うけど…」

「別に浮気するわけじゃないよ。
食事するだけ。

たまには同じ年くらいの男の人と食事くらいしたいかなって。」

「ま。気持ちはわかる。

おじさんとばっかり付き合ってたら若者の感覚失いそうだもんね。」

「なんか失礼なんだけど…」

だが桜智も鴻としばらく付き合って、それなりに独占欲が強くなり、不満も出てきた。

鴻は忙しく、人目もあるので外でデートする事はほとんどない。

いつもマンションで桜智を抱いて帰るだけの鴻を
遊びたい盛りの桜智は物足りなく思ってしまう。

この前その事を責めたら、鴻は桜智に

「遊びに行きたいならそういう彼氏を作ったら?」

と簡単に言われてしまった。

自分は鴻にとって身体とお金だけの関係でしかない事を桜智は悲しく思った。





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