aventure
そして桜智はその機会を今、得ようとしてる。

相手が誰かもどんな目的で誘ってるかも知らずに
桜智は颯斗になりすました波瑠に誘われて
授業が終わるとすぐに
波瑠との待ち合わせ場所に向かった。

待ち合わせ場所は父が桜智と逢っていた場所をわざと指定した。

「お待たせしました。」

無防備に胸の開いたシャツがやけに色っぽく感じた。

父が彼女に惹かれた理由もわからないでもない。

でも凪とそう年も変わらない彼女を抱いてる父を思うと吐き気がした。

「桜智さんて呼びにくいね。

サッちゃんでいいかな?」

「はい。」

波瑠も笑うと鴻と同じようにエクボが出来る。

桜智はその笑顔にドキッとしてしまう。

「ここは来たことある?」

波瑠に突然聞かれて、
桜智は鴻の事を思い出した。

「あ、一度だけ。」

「友達と来たの?結構高いでしょ?」

大学生の友達の同士で入るような手頃な店をじゃない事を桜智は今気が付いた。

「友達とじゃなくて…知り合いの大人の人と…」

「知り合いの大人…ね。

まさか男の人?

社会人の元カレとか?」

桜智は何て説明していいかわからず
言葉を濁して話題を変えた。

「あの…先輩はどうして私の事誘ったんですか?」

ストレートな質問に波瑠は動じず平気な顔で嘘をついた。

「前にも見かけて…可愛いなって思って。」

目の前で頰を赤らめる桜智を見て
少しだけ可愛いと思ってしまう。

「良かったらこの後もう一軒どうかな?

お酒は飲める?」

桜智は鴻が夜にやって来ると思って波瑠の誘いを断った。

「あ、この後は…バイトがあって…
時間がないんです。

また今度誘ってください。」

桜智と別れた波瑠は桜智を尾行した。

バイトというのは嘘で
マンションにそのまま帰る桜智を見て
しばらく待っていると案の定
父がマンションに入っていくのが見えた。

その姿を見て波瑠は深いため息をついた。




< 15 / 95 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop