コガレル ~恋する遺伝子~


***


 エステにいたのは夢だと咄嗟に悟った。
 ここは自分の部屋。
 だから今、オデコに流れてるのはハーブオイルじゃない。
 暗闇で横たわる私は、なぜか水を浴びてた。

 思わず叫んで掛け布団を剥ぐと、飛び起きた。
 実際に身体が飛び跳ねたから、文字通り『飛び』起きた。

 濡れた額を腕でこすりつつ、枕元のサイドランプを灯した。
 右、左と首をひねって、この部屋の異常事態を確認する。
 さっきまで頭を乗せてた枕には、今も水が降り注いでる。
 水の出処を突き止めようと、恐る恐る見上げた。

 天井に貼られた複数枚の木目の板。
 その継ぎ目から水が滴ってる。
 何ヶ所も、何ヶ所も。
 まるで蛇口が埋め込めれているかのように、ボタボタと天井から水が滴り落ちてきた。

 サイドランプの灯りだけじゃ頼りない。
 もっと、きちんと事態を把握しなくちゃ。
 砕けそうになる腰に喝を入れて立ち上がると、入口の壁の電灯のスイッチを押した。

 ありえない…
 
 床には水が溜まったり、染みてたり…

 昼白色の光が部屋の惨状を暴いた、次の瞬間
『バチンッ!』って音がして、再び闇が訪れた。

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