コガレル ~恋する遺伝子~
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エステにいたのは夢だと咄嗟に悟った。
ここは自分の部屋。
だから今、オデコに流れてるのはハーブオイルじゃない。
暗闇で横たわる私は、なぜか水を浴びてた。
思わず叫んで掛け布団を剥ぐと、飛び起きた。
実際に身体が飛び跳ねたから、文字通り『飛び』起きた。
濡れた額を腕でこすりつつ、枕元のサイドランプを灯した。
右、左と首をひねって、この部屋の異常事態を確認する。
さっきまで頭を乗せてた枕には、今も水が降り注いでる。
水の出処を突き止めようと、恐る恐る見上げた。
天井に貼られた複数枚の木目の板。
その継ぎ目から水が滴ってる。
何ヶ所も、何ヶ所も。
まるで蛇口が埋め込めれているかのように、ボタボタと天井から水が滴り落ちてきた。
サイドランプの灯りだけじゃ頼りない。
もっと、きちんと事態を把握しなくちゃ。
砕けそうになる腰に喝を入れて立ち上がると、入口の壁の電灯のスイッチを押した。
ありえない…
床には水が溜まったり、染みてたり…
昼白色の光が部屋の惨状を暴いた、次の瞬間
『バチンッ!』って音がして、再び闇が訪れた。