コガレル ~恋する遺伝子~



「こちらです」

 停められた車。
 どうやら到着したらしい。
 こちら、と彼が手の平を上に向けた指の先にその建物はあった。

 それは木造でかなりの年代物に見えた。
 一軒家を改築した賃貸物件だそうだ。
 一階には大家さんである老夫婦が住んでる。
 完全に独立した二階の部屋が物件だと言う。
 
 今は巣立った大家さんの息子さん達が育った家。
 修繕を繰り返してはいるものの、建物自体は昔のままらしい。

 外観は確かに少し…多少…残念だけど、案内された二階の部屋はリフォームされてどこも綺麗だった。
 日当たりも申し分ない。

 窓を開けさせてもらうと見えたのが、通りを挟んだ向かいにある住宅街。
 その後ろに続く高台には緑が茂ってた。

 不動産の男性に尋ねると、あそこは公園だと言う。
 さらに上には西欧風の建物が見えた。
 公園の何か施設の一つかと思った。

 一通り見せてもらってから下に降りると、在宅だった大家さん夫婦に挨拶ができた。
 どうやら私は、怪しさ基準をクリアしたみたい。

 次の日には賃貸の契約が交わされて、晴れてこの街の住民になった。

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