コガレル ~恋する遺伝子~
ガス灯を模した照明に照らされたアプローチ。
不規則な形の石材タイルが緩やかに蛇行して敷かれてる。
その両サイドには樹木が植えられて、見え隠れする先に重厚な両開きの玄関扉があった。
扉の上には長くて大きなガラスが数枚、はめ込まれてる。
中は吹き抜けになってるのかも知れない。
古いけどよく手入れされた洋館。
どんな人が住んでるんだろう?
でもここで今、想像するのはやめた。
爪先立ちで中を覗き込んでた。
あまり長居して中を窺っても、怪しまれるかも知れない。
見る人が見れば、既に充分怪しい。
近くで見られて満足だった。
もう行こう、一歩後ろへ下がった時、近づくエンジン音に気づいた。
ここまで歩いてきた道とは反対方向から来た車。
私から数メートル手前に止まると、数回のパッシングをした。
ライトの向こう側の車中は暗くて、人物は見えない。
パッシングが何を意図するのかも分からない。
ただハイビームが眩しくて、光を避けるために手の平をかざした。
その瞬間、私の意識は途絶えた。