コガレル ~恋する遺伝子~
この日のドラマ収録は上の空だった。
白岩とは俺の仕事が終わり次第、会う約束をしてある。
服を着替えると、ポケットから白岩の名刺を出した。
「裏に個人の番号が書いてあります」
自宅のゲートでそう言われた。
俺が名刺の裏を確認したのを見て白岩は、その場をやっと動いた。
番号に電話をかけると、2コールで繋がった。
白岩の宿泊するホテルのラウンジで会うことにして、電話を切った。
着いて地下に車を停めると、ラウンジの階へ上がった。
ラウンジの喫茶に一歩足を踏み入れたら、すぐに白岩と目が合った。
黙って向かいに腰掛けると、脇に立ったウエイトレス。
コーヒーを頼んでから白岩のカップを見れば、すでに空だった。
「弥生とは兄妹と言っても、便宜上そう言ってるだけで、血の繋がりも、戸籍も他人です」
挨拶も世間話もなく、白岩は話始めた。
「弥生は中学の時母親を亡くして、母親の姉である俺の母が引き取りました」
待て。
頭を整理しよう。
白岩の母親と弥生の母親は姉妹だから、この目の前の白岩と弥生はいとこ関係だ。
「血の繋がりはあるだろう」
「俺は父親の連れ子。再婚同士の両親、俺と母親に血の繋がりはない」
ここでウエイトレスがコーヒーを運んできて、会話は一旦中断された。