コガレル ~恋する遺伝子~


 この日のドラマ収録は上の空だった。

 白岩とは俺の仕事が終わり次第、会う約束をしてある。
 服を着替えると、ポケットから白岩の名刺を出した。

「裏に個人の番号が書いてあります」

 自宅のゲートでそう言われた。
 俺が名刺の裏を確認したのを見て白岩は、その場をやっと動いた。


 番号に電話をかけると、2コールで繋がった。
 白岩の宿泊するホテルのラウンジで会うことにして、電話を切った。


 着いて地下に車を停めると、ラウンジの階へ上がった。
 ラウンジの喫茶に一歩足を踏み入れたら、すぐに白岩と目が合った。
 黙って向かいに腰掛けると、脇に立ったウエイトレス。
 コーヒーを頼んでから白岩のカップを見れば、すでに空だった。


「弥生とは兄妹と言っても、便宜上そう言ってるだけで、血の繋がりも、戸籍も他人です」

 挨拶も世間話もなく、白岩は話始めた。

「弥生は中学の時母親を亡くして、母親の姉である俺の母が引き取りました」

 待て。
 頭を整理しよう。

 白岩の母親と弥生の母親は姉妹だから、この目の前の白岩と弥生はいとこ関係だ。

「血の繋がりはあるだろう」

「俺は父親の連れ子。再婚同士の両親、俺と母親に血の繋がりはない」

 ここでウエイトレスがコーヒーを運んできて、会話は一旦中断された。


< 176 / 343 >

この作品をシェア

pagetop