コガレル ~恋する遺伝子~
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ドラマ収録はもう残すところ数日だった。
近頃はマンションとスタジオの往復だけだ。
外に出る気も起きないし、かといって部屋の中で何かする訳でもない。
ただ仕事するために起きて出かけて、帰ったら寝る生活だった。
じゃあ、仕事に打ち込んでるのか、と聞かれればそうでもない。
求められるままに、つつがなく演じるだけだ。
今日の収録は成実と二人のシーンがほとんど。
その中に抱き合ってキスするシーンがあった。
ドライでは軽く流しただけ。
本番で成実の腕を引いて抱きしめた時だった。
突然の虚無感に襲われた。
「何よ?」
「ん、いや…」
成実が訝しげに俺を見た。