コガレル ~恋する遺伝子~


「…は?」

 婚約者?

 固まる私の元にその時、ブレザー姿の男の子が現れた。
 さっき専務に呼び出されて、おそらく上から降りてきたんだと思う。
 髪は軽く染められて、ひ弱感はないけど線が細い。
 今時の男の子という印象。

「もしかして、新しい家政婦さん?」

 私にそう聞いた。
 少し見上げる程の身長と人見知りしなさそうで愛嬌ある表情。
 上下左右に振られている尻尾が見えそうな気がした。

「これが、次男の准。今、高2か?お前?」

 専務がそう疑問符を交えながら紹介してくれた。
 次男さんは、「そうそう」と呆れたように頷いた。
 その次男、准さんの後ろからもう一人現れた人物はTシャツにハーフパンツ姿。
 ラフな格好なのに均整の取れたスタイルが、モデルのように見えた。

「こっちが長男の圭。一応、社会人」
「一応って、」

 呆れたような声は出したものの、怒った口調ではなかった。
 でも端正な面持ちの表情が、一つも変わらないから本当のところは分からない。
 寝起きで機嫌が悪いのかも知れないし、部外者の存在を警戒してるのかも知れない。
 弟と違って、近寄り難い雰囲気を醸し出してた。

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