コガレル ~恋する遺伝子~


 代金をカードキーで清算すると、二人でエレベーターに乗り込んだ。

 最上階から下へ、すぐに止まった。
 扉が開くと部屋まで案内してくれるホテルのスタッフがいた。
 丁寧な対応はそのはずで、ドアを開けたらそこは、スイートルームだった。

「座って」

 圭さんは私をソファに誘導すると、自分も隣に座った。
 ベッドはここにはない。
 奥に続くドアが見えた。

 目の前の全面ガラス張りの向こうには、さっきとは角度の違う熊本の夜景が広がってる。
 立ち上がって窓に近づこうとしたけど、握られた手首を離してもらえなかった。


「成実だけど。一緒に住んでない」

 成実さん…
 あの日、圭さんと腕を組んで、私の目の前でマンションの中へ入った。
 でも成実さんだけすぐに出てきた。

「知ってます。
歯ブラシが一つしかなかったし、お風呂も女優仕様の物は見当たらなかったから」

 圭さんは呆れたように笑ったけど、すぐに真剣な表情に戻った。


「寝てないから、成実と。
一度もそうなったことはないし、なりたいとも思わない」

 圭さんがそう言うなら、そうなんだろう。
 圭さんを信じる。
 でも、
「成実さんは圭さんを…」

 言葉の途中で強く抱きしめられた。

「ごめん、もう大丈夫だから」

 耳元で謝る圭さんを抱きしめ返すと、頭を撫でられた。


「ねぇ、」

「ん?」

「弥生が待てって言うなら、何年でも待つよ。
東京でハチ公みたいに」

 そう言われて頭に浮かんだのは…

「超大型犬…」


 圭さんは身体を離すと、不敵な笑みを浮かべた。

「俺は焦ってるのに。随分な、余裕だね」

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